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よくあるトラブル——自動スプレーガンの液が出ない! 原因と対策

よくあるトラブル——自動スプレーガンの液が出ない! 原因と対策

コラム「よくあるトラブル」シリーズでは、お客さまから寄せられるさまざまなトラブルについて、何が原因か、どうすれば直るかを解説します。今回は自動スプレーガンの「液(スプレー)が出ない」トラブルについて。

スプレーが出ない6つの主な原因

 

「マニュアル通りに接続したが、スプレーが出ない」「先週までは正常に使えていたのに、急にスプレーが出なくなった」――。お客さまからの相談で多いのが、こうした液が出ないトラブルです。その主な原因として、以下の6つが挙げられます。

 

ピストン作動エアが足りていない

液量調節器が十分に開いていない

液用タンクのバルブが開いていない

液がスプレーガンまで届いていない

液通路にゴミが詰まっている

ピストンセットにグリスが付いていない

 

自動スプレーガンを購入し、マニュアル通りに接続した。それなのにスプレーが出ない場合、まず疑うべき原因は、上記のはじめの4つです。一つずつ見ていきましょう。

 

ピストン作動エアが足りていない

コラム「自動スプレーガンの構造と制御のしかた」で説明していますように、自動スプレーガンはエア圧力によりスプレーのオンオフを制御します。ピストンセットを0.2〜0.3MPa程度(必要な圧力は機種により異なります)のエア圧力で押すことで、液通路が開き液が出ます。そのため、このピストン作動エアの圧力が足りないと液が出ません(キャップからエアのみが出ます)。

 

「ついこの前まで問題なく使えていた。エア圧力は十分のはずだ」。そう思っていても、スプレーガンを洗浄し付け直した際、ホースの接続口を付け間違えてしまうことがよくあります。0.2〜0.3MPaのエア圧力が必要なピストン作動エアに対し、液体を微粒化するための霧化エアは通常0.02〜0.15MPa程度。したがって、ホースのつなぎを間違えるとピストンセットが作動しません。

 

 

また、一つのエア源から複数の設備にエアを供給している場合、ほかで圧縮エアを使っている間だけ圧力不足になることがあります。ピストンセットが正常に動いているかを確認するには、自動スプレーガンの液量調節器に指を当ててみてください。正常な場合、ピストンセットが引いて調節器に当たる振動を感じることができます。カチッ、カチッというピストンセットの動きを確認できなければ、ピストンセットが動作していない可能性があります。

 

 

液量調節器が十分に開いていない

スプレーガンの液量調節器は、はじめに2〜3回転開けてください。調節器は、最初の1〜2回転は液が出ない構造です(何回転開けると液が出始めるかは、機種により異なります)。ST-6シリーズであれば2回転程度、ST-10シリーズであれば3回転程度開けてスプレーし、スプレーの状態を見ながら調節器で液量を調整します。

 

液用タンクのバルブが開いていない

これは単純なミスです。液用タンクのバルブが閉まっていないか、確認してください。

 

液がスプレーガンまで届いていない

液体は間違いなく、スプレーガンまで供給されていますか?液体の粘度が高い場合、またホースが長すぎる場合、液がホースの途中で止まってしまうことがあります。このような場合、ホースの径を太くしたり、液経路を短くしたりすることが有効です。ホースが下から上に上がる液経路も、なるべく避けた方がいいです。

 

また液ホースを分岐すると、液体にかかる圧力はどんどん下がっていきます。スプレーガンの台数が多くなりすぎると、ホースの途中で液が止まりやすくなります。使用するスプレーガンの台数が多い場合、液用タンクを2台以上使うことをお勧めします。また液ホースは、液が途中で止まっているときにすぐにわかる、透明のものが便利です。

 

洗浄時にやりがちなうっかりミス

 

次の2つはスプレーガンを継続的に使っている中で起きるトラブルです。

 

液通路にゴミが詰まっている

液体の固形分などのゴミがスプレーガン内にたまって詰まると、スプレーの出が悪くなります。

 

詰まりがもっとも発生しやすいのはスプレーガンの先端部(エアキャップと液出口)です。エアキャップの汚れが原因である場合は、シンナーや洗浄液を含ませたウエスでキャップを拭くと改善されるはずです(詳しくは技術コラム「スプレーガンの詰まりを防止する7つのコツ」を参照)。液出口を含め、スプレーガン内部にゴミが詰まっている場合は、スプレーガンの洗浄が必要です(メンテナンスマニュアルはこちらからダウンロード)。

 

ピストンセットにグリスが付いていない

スプレーガンの分解洗浄を行なった後、ピストンセットにグリスを付け忘れていませんか?グリスが付いていないと、液を出し止めするピストンセットの動きが悪くなります。

 

スプレーガン内部には、ピストンセットが前後に動くための空間(ピストン室)があります。ピストン室は、外部に開放されていない密閉空間となっていて、ピストンに装着したOリングによりシーリングされています。

 

 

このOリングにはグリスが付けられているため、ピストンセットはピストン室の密閉性を確保しつつ、エアが入るとその圧力でスムーズに後ろに引きます。ところが、スプレーガンの洗浄でOリングのグリスが取れると、抵抗が大きすぎてピストンセットはうまく摺動しなくなってしまいます。洗浄後は必ずグリスを付け直してください。

 

また、このOリングはニトリルゴム(NBR)製のため、有機溶剤に触れると膨潤します。洗浄の際には外し、洗浄液やシンナーに触れないように注意してください(構造的に液に触れない箇所にあるため、スプレーガンの使用中に膨潤が起きることはまれです)。膨潤したOリングを新品に交換しグリスアップすれば、症状は改善するはずです(メンテナンスマニュアルはこちらからダウンロード)。

 

自動スプレーガンのスプレーが出ない6つの原因を解説しました。これらの原因に当たっても改善が見られない場合、こちらよりお問合せください。お客さまの症状を伺い、改善をサポートいたします。

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