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自動スプレーガンの構造と制御のしかた

自動スプレーガンの構造と制御のしかた

液体とコンプレッサーエアを混ぜて霧化する塗装機器スプレーガン。自動車ボディの塗装やDIYで使われるハンドスプレーガンのイメージが強いですが、生産現場では別のタイプも使われています。それが固定式の「自動スプレーガン」です。本コラムでは、自動スプレーガンの使用を検討し始めた方にまず知ってもらいたい、基本のキをご説明します。

自動スプレーガンとは?何に使えるの?

自動スプレーガンは、工場などの生産現場で使われる塗装機器です。ハンドスプレーガンとは異なり生産ラインに固定され、自動制御により液体をスプレーします。

 

自動スプレーガンの用途はさまざまです。塗装やコーティングはもちろん、金属加工油、防錆油、離型剤、フラックス 、接着剤、食用油、シロップ、化学薬品など、あらゆる液体の塗布に使われています。コンプレッサーエアをぶつけることで、液体を細かい粒子にバラし薄く均一に広げるというのが、その本質的な機能です。

 

 

自動スプレーガンを導入するユーザーには、まったく新規に塗布方法を探している方もいれば、ほかの塗布手段、たとえば手作業でのハケ塗り、ローラー、滴下、一流体ノズルなどから切り替えて利用する方もいます。

 

自動スプレーガンは適量の液体を均一に塗布できることが特長です。そのため、従来の方法で塗りムラが生じていた場合、自動スプレーガンへの切り替えによってムラをなくし、歩留まり(良品率)を向上させることが期待できます。また、塗布不足を恐れて液体を多めに出していることも、現場ではままあります。こうした場合、自動スプレーガンを導入して適量を塗布することで、液体の使用量を削減することが期待できます。

 

ハンドスプレーガンとの違いはオン・オフの制御方法

ハンドスプレーガンと自動スプレーガンは、構造的にどう違うのでしょうか?一言で言うと、トリガーでオン・オフするのがハンドスプレーガン、コンプレッサーエアでオン・オフするのが自動スプレーガンです。下の断面図をご覧ください。

 

 

どちらのスプレーガンも、内部にニードルが入っていて、液通路をふさいでいます。これがオフの状態です。ガン先端の液出口がふさがっているため、液が漏れることはありません。ハンドスプレーガンをオンにするにはトリガーを引きます。トリガーを引くと、ニードルが後ろに引き、液通路が開放されます。すると、液体とコンプレッサーエアが混ざり、微粒化されたスプレーが出ます。トリガーを離すと、ニードルが再び液通路をふさぎ、スプレーが止まります。

 

一方の自動スプレーガンは、ニードルを手動ではなく、コンプレッサーエアの圧力により引くようにしたものです。0.3MPa程度の高圧エアをオン・オフ用エア(ピストン作動エア)入口に入れると、エアの圧力によってピストン(ニードルと一体になっています)を押し、液通路を開放させます。これにより液体とコンプレッサーエアが混ざり、スプレーされます。オン・オフ用エアを止めると、ばねの力でピストンを押し戻し、液通路をふたたび閉じます。

 

スプレーの状態をどう調整するのか?

前の項で触れたように、コンプレッサーエアには2つの役割があります。一つはバルブ(ニードル)開閉の動力として、もう一つが液体を霧化する運動エネルギーとしてです。この二つ目のエア(霧化エア)の圧力を上下させることで、スプレーの状態を調整することが可能です。

 

霧化エア圧力を高くする(0.1-0.2MPa程度)と、液滴の粒子径は小さくなるため、塗装面はなめらかに美しく仕上がります。ただし、細かく霧化された粒子の多くは対象物に塗着せずに散逸してしまうため、液体の使用量が増えます。

 

反対に霧化エア圧力を低くする(0.02-0.05MPa程度)と、雨粒大のふぞろいな液滴が吐出されます。ソフトにスプレーされた液滴は対象物にピタッと付着するため、液のムダが少ない効率的な塗布が可能です(塗装用語では、「塗着効率が高い」と言います)。したがって、美しく仕上げる「塗装」であれば霧化エア圧を上げ、ある程度均一に付いていればかまわない「塗布」であれば、霧化エア圧を下げるのがセオリーです。

 

 

エア入口1本タイプとエア入口2本/3本タイプの違い

ルミナの大半の機種は、エア入口が1本のタイプ(ST-5、HM-1、HM-3など)とエア入口が2本のタイプ(ST-6、HM-6、PR-40など)に分かれます。コンプレッサーエアをオン・オフと霧化の2つの用途に使うことはすでに説明しましたが、この2つそれぞれにエア通路を設けたのがエア入口2本タイプです。簡易的に、1本のエア通路で済ませているのがエア入口1本タイプです。

 

すでに説明しましたように、バルブを開放するには0.3MPa程度のエア圧力が必要です。そのためエア入口1本タイプは、必然的に0.3MPa程度の高いエア圧力で霧化を行うことになり、飛散が避けられません。飛散が望ましくない場合、エア入口2本タイプを選んでください。

 

 

ルミナには、エア入口が3本ある機種もあります(ST-6W、MK-3など)。これはオン・オフ、霧化のほか、スプレーパターン用エアの入口を設けたものです。

 

スプレーパターンとは、スプレーの形状を意味する用語です。パターンには主に丸吹と平吹(楕円)があり、平吹は丸吹のスプレーをエア圧で押しつぶすことで作ります。エア入口2本タイプの場合、パターン用のエアは霧化エアと兼用ですが、3本タイプはパターン専用の入口を備えています。これにより、平吹スプレーの横幅(パターン幅)をよりきめ細かく調整することができます。

 

一流体ノズルと二流体ノズルの違い

ところで、夏場の屋外施設で、冷却目的に霧化した水を吹いている光景を見かけたことがあるでしょう。こうした場所で使われているスプレーノズルを「一流体ノズル」と言い、エアを使わず液体の圧力のみによって霧化しています。食品工場のタンクや調理釜の洗浄でもよく使われているノズルです。本コラムで紹介している自動スプレーガンは、液体とコンプレッサーエアの二つの流体を混ぜる「二流体ノズル」です。

 

一流体ノズルは、コンプレッサーエアがいらない手軽さが魅力です。特に加湿や冷却目的に水を吹く場合には、水道の蛇口から直接つなげば液用ポンプもいらず、設置が非常に簡単です。また液体を高圧で吐出できるため、圧力で汚れをこすり落とす洗浄なども得意とします。他方、液体に高圧をかけるため吐出する流量は比較的多く、液滴の粒子径も大きくなります。そのため微量の液体塗布や、塗装、コーティングには向きません。またバルブが内蔵されていないためスプレーは瞬時に止まらず、液通路内に残った液がしばらく流れ出ます。生産現場でも、用途によってこの2種類のノズルが使い分けられています。

 

自動スプレーガンの接続は難しくない

最後に、自動スプレーガン2台への接続方法を説明します。使用に当たって必要なものは、「操作ガイド」の「必要なもの」でご確認ください。スプレーガンはエア入口2本のST-6です。液体の供給方法には圧送タンク、重力式容器、ポンプの3通りがありますが、ここでは圧送タンクを使います。以下に示したのは簡易的な接続の例です。

 

コンプレッサーから出たエアは分岐し、一つがスプレーガンに、もう一つが圧送タンクに送られます。液体は常に圧力がかけられ、スプレーガン内まで供給されている状態にしますので、タンクのエア通路に弁は不要です。

 

スプレーガンはオンのタイミングにだけエアを入れます。このタイミングの制御にコントロールボックスや電磁弁を使います。電磁弁にはエア通路の数により、2ポート〜5ポートまで種類があります。自動スプレーガンの制御に使う電磁弁は、必ず排気ポートがある3ポートタイプを使うようにしてください。特に排気ポートがない2ポート弁を使うと、エアを止めてもスプレーガン内の残圧が抜けないため、ニードルバルブが開きっぱなしになり、液が止まりません。

 

上の配管図では、コントロールボックスの先で分岐し、片方にだけエアレギュレータが入れてあります。これは霧化エアの圧力を上下させることで、スプレーの状態を調整するためのものです。オン・オフ用エア(ピストン作動エア)は元圧のまま入れてもかまわないため、レギュレータを使いません。

 

上記は簡易的な接続方法です。電磁弁(コントロールボックス)1つでオン・オフ用エアと霧化エアを同時に出し止めするため、スプレー停止時にスピットと呼ばれる粗い飛沫が出ることがあります。これを防ぐには、オン・オフ用エアと霧化エア、それぞれの通路に電磁弁が必要です。オン・オフ用エアが止まったコンマ数秒後に霧化エアが止まるよう時間差を付けることで、最後まできれいにスプレーできます。

 

自動スプレーガンについて、大まかに理解することができましたでしょうか?本コラムではハンドガンとの違い、一流体ノズルとの違いなどを説明しましたが、スプレーガンはスプレー方式によってさらに細分化されています。理解を深めたい方は技術コラム「スプレーガンの種類をすっきり解説(エア、エアレス、HVLP、静電…)」もご覧ください。

 

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