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プレス加工の塗油が、多すぎても少なすぎてもダメな理由

プレス加工の塗油が、多すぎても少なすぎてもダメな理由

プレス加工における材料への塗油。多めに付けておけばいいと思っていませんか?油不足が問題となることはもちろんですが、油が多すぎてもカス上がりなどのトラブルが生じます。こうした現象は製品不良や金型の破損につながりかねません。本コラムでは、そんな事態にならないための適量塗油の方法を解説します。

油は多めに付けておけばいい、は間違い

 

プレス加工の際に必要になるのが、板材への加工油塗油です。プレス加工では、板材に数十トンから数百トンもの圧力で、金属の金型が押しつけられます。加工油がなければ、製品がキズだらけになってしまうことは想像に難くありません。

 

加工油は二重の保護膜で材料を守っている

 

加工油は材料表面に油膜を張ることで、材料と金型が直接こすれ合うのを防ぎます。さらに、油に含まれる硫黄やリンなどの成分は材料と化学反応を起こし、磨耗や焼き付きに強い化学被膜を形成します。この二重の保護膜が、高圧のストレスにさらされる材料を守ってくれるのです。

 

 

油の恩恵を受けるのは、板材だけではありません。高い圧力での金属との摩擦は、金型にもダメージを与えます。金型は幾度となく板材とこすれ合うことで高温になり強度が下がるため、次第に脆くなりすぐに寿命を迎えてしまいます。板材に塗油すると金型にも油がなじみ、摩擦抵抗を減らす上、熱の一部を吸収してくれるため、金型へのダメージは軽減され寿命が延びるのです。

 

このように、プレス加工で油が必要なことは多くの作業者が認識していますが、逆に油が多すぎてもいけないことはご存じでしょうか?油が足りなくなるのが怖いので、多めに出そうーー。そう考えて、給油ローラーの液量設定を全開にしている作業者は少なくありません。しかし、油は多すぎても、油コストの増大や脱脂の長時間化を招きます。なかでも怖いのが、カス詰まりとカス上がりです。これらのトラブルは最悪、高価な金型を破損させかねないため、細心の注意を払って防止する必要があります。

 

油の付けすぎで起こるカス詰まりとカス上がり

 

カス詰まりとは、打ち抜き加工によって発生したスクラップ(カス)が、ダイ(下型)の中にたまり詰まってしまう現象です。ダイは本来、打ち抜かれたカスが下に落ちる機構になっていますが、何らかの理由でカスが正常に排出されていない状態です(イラスト左)。カスがたまっているところをパンチ(上型)が何度も打ち付けるため、金型の破損につながります。

 

ダイの穴にカスがたまっている状態は、さらに大きなトラブルであるカス上がりにつながります。ダイの穴の入り口付近までたまったカスは、パンチに張り付いて引き上げられた拍子に、板材の上に落ちることがあります。また、搬送される板材の裏面に張り付いて、ダイと板材の隙間にもぐり込むこともあります。これらがカス上がりという現象です(イラスト右)。スクラップがかんだ状態でプレス加工を行うことになるため、製品に打痕を生じさせたり、最悪の場合、金型をダメにしてしまいます。

 

 

カス詰まり、カス上がりの原因の一つが、油のつけすぎです。薄板のスクラップが1枚ずつ下に落ちていく場合には、カス詰まりは起きません。ところが、油でべたついたスクラップはダイの穴の中でくっつき、棒状になることがよくあります。狭いダイの穴の中に、こうしたカスの集合体ができ上がるため、詰まりが発生するのです。

 

カス上がりの場合も、油のべたつきが悪さをします。どれだけ穴にカスがたまっても、カスが自分の力で材料の上にジャンプすることはありません。パンチが上がる際に、油でベタついたカスを一緒に引き上げるからこそ、カス上がりが発生するのです。

 

このように、加工油の塗油量は多すぎても少なすぎてもいけません。では、どのように適量塗油をすればよいでしょうか。コラム「プレス加工の油塗布、3つの方法を徹底比較!」で紹介しましたように、塗油には主に3つの方法があります。その中で、適量塗油に最も適しているのが自動スプレーガンです。自動スプレーガンは、コンプレッサーエアを用いて加工油を液滴状にばらし、楕円に広げます。非接触のため、適量の油を安定的に供給することが可能です。製品不良や金型トラブルのリスクを減らし、適正な生産管理へと導いてくれる塗油方法だと言えるでしょう。

 

流量計を使い、液量を「見える」化

 

自動車業界など、生産管理の厳しい業界では、セットメーカーから塗油量の数値化を求められることがあります。そのような場合、自動スプレーガンに液体用流量計を組み合わせることで、1ショットごとの吐出量を「見える」化できます(液体の種類や粘度により、流量計が使えない場合もあります)。

 

 

スプレーは目視で確認しにくいことが多いため、ちゃんと塗油できていることが数値で確認できると安心です。作業者が液量設定を変えてしまい、必要以上の量がスプレーされていることも多々あります。適量塗油を目指す場合、流量計による数値化は有用な手段となることでしょう。

 

プレス加工油の塗油方法をお探しの方、さらなる精度向上をご希望の方は、ぜひ一度、ルミナにご相談ください(お問合わせはこちらから)。

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